320149 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

玲子ちゃんに再会

                    ≪十月二十八日≫    ―壱―

  昨日の雨が嘘のように、青い空が窓を通して入り込んでくる。

寝起きの悪い、だるい身体を横たえたまま、ジッとしていると、何と隣で眠

っているはずの彼女が、パンツ一枚の姿で部屋の中を歩き回っているではな

いか。

  どうやら、朝のシャワーを浴びて来たばかりのようで、トップレス姿。

俺が起きていると気がついたのか、平気な顔で朝の挨拶をしてくるではない

か。

本人はトップレス姿は、いつものことのようで、何が珍しいのよと言う感じ

でしかない。

彼女に習って、シャワー室に入るが、お湯が出ない。

仕方なく、冷たい水で髪の毛だけ洗うことにした。

ビックリするような冷水を頭からかぶりシャワー室を出る。

一遍に目が覚めてしまった。

  シャワー室は、トイレも一緒になっていて、シャワーを浴びているとき

に、若い女性がトイレに飛び込んできたのには、またまたビックリ・・・・

だ。

女の子がトイレを使っている間、シャワー室から出るに出られず困ったもん

だ。

日本では考えられないおおらかさではないか。

   外人に言わせれば、日本の銭湯や混浴の方が、よっぽど驚かされると

言う。

隣の彼女に、シャワー室のお湯が出たのか聞くと、コインを入れても、しば

らく待たなければ、お湯は出てこないと言う。

どうやら旧式のメカニズムに原因がありそうだ。

”これでは、ジョセフ・ハウスの方がずっと居心地が良かったかな”

と嘆いてみても、後の祭り。

   久しぶりの洗髪で気持の良い朝を迎えることが出来た。

トップレスの彼女にも感謝。

                     *

   祭日のため、外に出てみると、町中がひっそりとしていた。

いつも開いている店のほとんどが閉まっている。

後で聞いた話だと、戦勝記念とも独立記念とも言うそうで、広場の方へ足を

運ぶと、家族ずれの人たちが、のんびり陽射しを浴びながら歩いている姿が

飛び込んできた。

途中で買った、サンドイッチをかじりながら、ジョセフ・ハウスへ向う。

   公園では、風船売りのおじさんが居て、子供達が風船に群がっている

光景が飛び込んできた。

細く長い糸でつながれた風船が、青く高い空にいくつもポッカリと浮かんで

いるのが見える。

”僕のが一番高く上がったぞ!”

そう言っているのか、歓声を上げながら、空に向って飛び上がりながら走り

回っている。

                     *

   ジョセフ・ハウスへの坂道の入り口で、玲子ちゃんにバッタリ会っ

た。

       俺「ヨー!!」

   玲子ちゃん「あらッ!!!」

       俺「みんな居るかい?」

   玲子ちゃん「まだ部屋に居ると思うわよ!」

       俺「どこへ行くの?」

   玲子ちゃん「今日はね!一人でリカベスト山へ登ってみるつもり。す

        ぐ上れる山らしいわよ。」

       俺「そうなの!!」

   玲子ちゃん「あっ!手紙・・・・受け取った?分厚かったから、現金

        でも入ってたんでしょ!」

       俺「ありがとう。受け取ったよ。小切手だけどね。」



   玲子ちゃん「ところでね。このジョセフ・ハウス、経営者が替わるら

        しいわよ。ほらッ、あそこに帽子をかぶったおじさんが居

        るでしょ!あのおじさんが、このジョセフ・ハウスのもと

        もとの持ち主だったらしいんだけど、今まで人に貸してい

        たらしいのよ。それを、返してもらって、これから自分で

        経営することになったんだって。」

   なるほど、坂の上のほうを見ると、帽子を被ったおじさんが誰かと話

している姿を見つけることが出来た。

そして、玲子ちゃんが続けて言った。

   玲子ちゃん「それでね、今まで長期滞在していた人たちが、追い出さ

        れるらしいのよ。」

       俺「仲間達は、大丈夫なの?」

   玲子ちゃん「部屋に居る仲間達は、大丈夫らしいのよ。短期の旅行者

        はね。追い出された人たちは、長期滞在者だけみたい。こ

        れから、ペンキを塗り替えたり、傷んでいる所を修復する

        んだって・・・・。朝食つかなくて、一人50Dr(400円)よ。

        これから泊まる人は、60Dr(460円)だって。」

       俺「へ~~~!」

   玲子ちゃん「それでね。今まで居たヨルダン人が居なくなって、皆が

        共同で使っていた、鍋なんか食器類が一緒に消えちゃっ

        て、自炊もやりにくくなったって、みんな嘆いていたわ

        よ。」

       俺「それは・・・・困ったことになっちゃったじやない。」

   玲子ちゃん「なんでも、インド人とかアラブ人なんかが追い出されて

         いるらしいのよ。」

       俺「じゃあ、別に宿泊させないって訳じゃあないんだ。」

   玲子ちゃん「それは大丈夫らしいわよ。行って見たら・・・・。」

       俺「玲子ちゃんは、いつまでここに居るんだい?」

   玲子ちゃん「兄と一緒だけど、たぶん来月の二日頃発つと思うんだけ

        ど・・・?」

       俺「そう!じゃあ、ちょっと皆のところへ行ってくるわ。」

   玲子ちゃん「うん!じゃあね!!」

 走る去るように、坂道を駆けていった。




© Rakuten Group, Inc.